プロジェクトストーリー:学びに、自由を。オンライン予備校、リリースまでの軌跡。

プロジェクト概要

世帯年収の平均が500万円台から400万円台にさがったいま、3人に1人の高校生しか予備校に通えないという現状がある。この格差を解消するために立ち上がった山口ほか3人のメンバーたちは、予備校のカリスマ講師の授業を無料で配信するサービスを考案した。リクルートが保有するアセットが通用しないゼロからのチャレンジ。失敗を危ぶむ声が多く聞こえる中、わずか1年で事業化を果たしたプロジェクトの全貌に迫る。

山口 文洋

山口 文洋

進学事業本部
メディアプロデュース統括部 執行役員 統括部長
ベンチャー企業にてマーケティング、システム開発を経験。2006年、「面白いことができそう」とリクルートへ。進学事業本部にて事業戦略・統括を担当したのち、メディアプロデュース統括部に。「バットは思い切り振る。狙うなら三振かホームラン」がモットー。

  • 西山 亮介
    西山 亮介

    進学事業本部
    メディアプロデュース統括部
    マーケット開発グループ
    2006年入社、住宅事業部にてメディアプロデュースと事業開発に従事する。本プロジェクトを機に、2011年秋に現事業本部へ。これまでにない新たなビジネスモデルの創造に向け、リクルート人生を懸けてプロジェクトを牽引。

  • 松尾 慎治
    松尾 慎治

    進学事業本部
    メディアプロデュース統括部
    マーケット開発グループ
    2006年入社。インターネットマーケティング局を経て、2009年、進学事業本部へ。カスタマーマーケティングからNetサービス設計・開発プロセスを支えた。

  • 池田 脩太郎
    池田 脩太郎

    進学事業本部
    メディアプロデュース統括部
    マーケット開発グループ
    2009年入社。高校への渉外、編集、商品企画、マーケット開発と一貫して進学領域を歩む。本プロジェクトにおいては、経験のない予備校講師のマネジメント、および、授業動画制作とそのリアリティ検証を手がけた。

受験における不平等を解消しよう

その日、山口の心に火がついた。きっかけは、定例の企画会議のこと。これまで進路選びのサポートを手がけてきたリクルートだが、もっと高校生のために貢献できることはないだろうか、との議論が交わされていた。するとメンバーのひとり、池田から「オンラインで、予備校のカリスマ講師の授業を無料配信したら、高校生は喜びますよね」との発言が飛び出した。その裏には経済格差や地域特性により、3人に1人の高校生しか予備校に通えない現状への疑問があった。当時を振り返り、山口は語る。「格差社会の中で道が閉ざされる若者がいる。塾や予備校がイニシアティブを握るマーケットだけど、彼らに現状を変えることはできない。リクルートがやらなければと感じました。それですぐに行動を起こしたのです」。山口は力を貸してくれるメンバーを集った。収益性を見据えたビジネスモデルを構築できる西山、ものづくりへの熱い想いを秘めた池田、カスタマーの気持ちに根ざしたマーケティング視点を持つ松尾。まさに最強のメンバー。こうして『オンライン予備校プロジェクト』が始動したのだ。

講師の心に火をつけろ

リクルートには面白い制度がある。ゼクシィやホットペッパーを世に送り出した、新規事業起案制度だ。最速で事業化を果たそうと考えたメンバーは、この制度を利用することを決意した。締め切りまで時間がない中で、ビジネスの必然性を伝えるデータや高校生の生声を企画書にまとめあげてエントリーしたのだ。結果、1次審査を無事に通過。予算500万円を獲得し、フィジビリティへとこぎ着けた。しかし、息をつく暇はなかった。いちばんの難関、講師陣の確保という問題が待ち受けていたのだ。突破口となったのは、想いに共感してくれた社員からの紹介だった。自らの知人をたどり、大手予備校の実力派講師につないでくれたのだ。ところが説明の場に現れた講師は、硬い表情。それもそのはず、単純にお金儲けが目的と誤解されていたのである。しかし、数分後には講師の顔に晴れやかな笑顔が浮かんでいた。山口が熱く語った「受験に自由を、志のある若者にチャンスを」という想いは、高校生とリアルに向き合う講師が、かねてより夢想していた世界観そのものだったのだ。判断は早かった。事業化が決まっていない状態にも関わらず、予備校を退職することを決意。翌年春からのプロジェクト参加が確約できたのだ。

確信を求めて韓国へ

一方で、メンバーには懸念があった。高校生の支持を得られる確信が、まだ持てずにいたのだ。そんな折り、リクルートの調査機関から吉報が届いた。「韓国に参考にできるビジネスモデルがある」という。山口はすぐに、韓国出身の社員に現地との橋渡しを依頼。週末にメンバーと現地入り、2日間で20人の高校生にヒアリングを敢行した。「ハードでしたね。でも得たものは多かった。日本と受験環境が似ている韓国の現状を前に確信が持てました」。これにより、プロジェクトは一気に加速した。実現に向け、"オンラインでも質疑応答を可能にする""デモ映像を高校生や東大生に視聴してもらい、理解しやすさ、集中力をキープする調整を加える"といった調整を重ねた。デモ映像を制作した池田は語る。「講義の仕方に意見したり、ログを見て視聴者が離脱した部分は妥協せず撮り直しをしたり。講師は指導におけるプロであり、私たちとは考え方も価値観も違う。衝突もありました。でも、高校生のために妥協はしたくなかった」。同時に掛け合わせたのが、継続性のあるビジネスモデルを模索する西山の視点、カスタマーマーケティングに精通した松尾の視点。多様な視点で磨きをかけていったのだ。

未来への序章

2012年10月。『オンライン予備校』がリリースの日を迎えた。「受験サプリ」と名づけられたサービスのひとつとして、既に提供されている「無料過去問題集・無料模試」と並び無料or低価格で提供されたのだ。扱う授業は英語と数学。理想とはまだほど遠い状態であったが1年を待たずに、既に無料会員が数十万人の高校生に浸透したと聞けば、どれほど待ち望まれていたサービスだったかが想像できる。それでも山口に達成感はない。「早急に全教科を揃えます。そして、まだ多くは言えませんが、単なる大学受験予備校に留まらないサービスを複数、既に準備に入っています」。やりたいこと、やるべきことが山積みなのだ。山口は、さらに言葉を重ねる。「受験勉強そのものが重要とは思っていません。ただ、受験勉強を通して、努力とか、やりきる強さとか、その先の人生に影響するスタンスを学ぶ重要な機会だとは思っています。そこに不平等があっては、意欲が損なわれてしまう。それが問題。平等な社会、努力が基本となる社会を創ることが、停滞している日本を元気にする原動力だと思うのです」。目指しているのは、21世紀のグローバル教育プラットフォームの構築なのだ。『オンライン予備校』は、序章でしかない。未来のマーケットを見据えた彼らのプロジェクトストーリーは、はじまったばかりなのだ。

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