RMP FEATURE

RMP FEATUREカーセンサー

DeNA×リクルート×中販連 特別対談
人とクルマが生む未来のドラマとは。
10年後の自動車産業を考える。

国内ドライバーの高齢化、少子化、価値観の多様化、ITの進化などさまざまな要因により、大きく変わろうとしている自動車産業。その中で生まれる、人とクルマのドラマもまた変わろうとしている。この大きな変化の中で私たちはどのように価値を発揮し続けていくのか。今回は、ゲストにIT業界から自動車産業に参入したDeNAの中島宏氏と、これからの自動車流通のあり方を考え続けている日本中古自動車販売協会連合会(以下中販連)の山下晋氏を迎え、リクルートマーケティングパートナーズ(RMP)からは執行役員 室政美、ネットビジネス本部プロダクトマネジメント部 部長 立花雄樹が登壇。未来に向けて人とクルマの関係はどう変わっていくのか、その時、ビジネスはどう変わっていくのかを考えていく。新しい挑戦を始めたゲストのお話から、すでに始まっている未来を感じることが出来るだろう。

2015-11-25

■中島宏氏 株式会社DeNA 執行役員
大学卒業後、経営コンサルティング会社へ入社。2004年12月DeNAへ入社。外部企業のIT戦略立案を担当後、広告営業部署のグループリーダーを経て新規事業の統括を担当する社長室室長に就任。2009年4月執行役員に就任し、新規事業推進室長、HR本部長、マルチリージョンゲーム事業本部長を歴任。現在、オートモーティブ事業の統括を担当。2015年5月に設立したロボットタクシー株式会社の代表取締役社長を兼任。

■山下 晋氏 一般社団法人日本中古自動車販売協会連合会 事務局長代行
中販連:中古自動車販売業の健全な発展を図るため、中古自動車の販売を主たる業とする企業の体制の高度化と中古自動車の公正な流通の促進を推進している。

10年後、自動車を取り巻く環境はどう変わっているか。

自動車業界に新しい風を吹き込み、一躍注目を集め始めたDeNA。無人で乗客を拾い、目的地まで運んでいくロボットタクシーの開発・推進や、この10月からスタートした個人間のクルマのシェアを支援するAnyca(エニカ)、スマホで使える無料のカーナビなど次々と新たな施策を打ち出し、オートモーティブ×インターネットで生まれる新たな時代を切り拓こうとしている。そのDeNAのオートモーティブ事業をリードしているのが中島宏氏だ。

一方で、これまでの日本の中古車市場の基盤を整え、1万を超える自動車販売店をネットワーキングし、新しい時代に向けて人と自動車のあり方を模索しているのが日本中古自動車販売協会連合会(中販連)の山下晋氏。まったく立場の違うお二人を、リクルートマーケティングパートナーズ(RMP)の執行役員で自動車領域担当の室政美、同じくRMPの自動車領域でネットビジネス本部プロダクトマネジメント部の部長を務める立花雄樹が迎え、パネルディスカッションは始まった。

DeNAはなぜ自動車産業に参入したのか?

立花 そもそもなぜDeNAさんが自動車業界に参入されたかを改めてお話頂けますか。

中島 それは必ず聞かれます(笑)。まずマーケットの話をしますと、自動車関連のマーケットは圧倒的に大きくて、自動車販売で9兆円、中古車で2兆円、その他整備や保険、カー用品やエネルギーなどを入れるとトータルで50兆円以上あります。ネットの世界で新規事業を検討する際には、例えばマザーマーケットが5000億だから20%をネット化して1000億のマーケットでいかにシェアを獲っていくかという肌感覚なのですが、50兆円ですから2桁違うのです。しかも、ここに来てGoogleやTeslaなど、まったく新しいプレイヤーが様々な切り口で参入し始め、動きが激しくなってきています。しかもその動きをインターネットが加速している。自動車を中心にライフスタイルが大きく変わる第二次モータリゼーションが起こるとすると、やはりそれはネットの力をテコにして新たな価値を生み出すことだと思うのです。そこに私たちのチャンスがあると思っています。

立花 確かにDeNAさんだけでなく海外でも異業種から参入する企業が生まれていますが、どこも大きなチャンスだと考えているんでしょうね。

中島 そうだと思います。今は、第一次モータリゼーションが1960年代の東京オリンピックをテコに起こったように、2020年の東京オリンピックをテコにして日本からグローバル標準モデルとなるような社会システムを生み出すチャンスの時です。上手くいけば日本経済を元気にもできる。
 さらに、私たちはこれをマーケットの魅力だけでなく、社会的な課題に対しても必要な取り組みだと考えています。例えば過疎地に暮らす高齢者の方々にとって、ロボットタクシーは非常に喜ばれるものとなります。人口が減るとタクシー会社も経営が成り立たなくなり、やがてその地ではタクシーもなくなってしまいますから。

自動運転技術の進化が生む社会変化とは

立花 今、2020年の東京オリンピックに向けてという話がありましたが、5年後のオリンピックを終えてさらに5年後。つまり今から10年後はどんな風に自動車を取り巻く環境は変わっていると思うか皆さんの考えを聞かせてくれますか。

 実はここに来る前にロボットタクシーのコンセプトムービーを見たんですが、「人のいないタクシーで、人のいるまちをつくる」というキャッチで展開されていて、すごくロマンがあっていいなと思いました。こうした自動運転というのはどんどん普及していくと思います。一方で私自身は、「クルマを所有するというスタイルが大きく減ることはなく、10年後も主流なのでは」と思っています。多少は減るかもしれませんが。

立花 どれくらいの割合になると思いますか。

 クルマを使っている人を母数としたときに、少なくともまだ7割は所有しているんじゃないでしょうか。

立花 なるほど。中島さんは10年後どういう環境になっていると思いますか。

中島 Googleが2017年に自動運転カーを販売すると言っていて、日本メーカーも2020年代後半には完全自動運転を実用化すると言っていますので、向こう10年で考えると完全自動運転社会が実現していると考えるのが自然だと思います。
 カーシェアリングに関しても10年というのは浸透するには十分な時間だと思っていて、人々の行動のあり方はドラスティックに変化していると思いますね。

山下 私は「完全」自動運転化にはもう少し時間がかかるのではと思ってます。あと15年でしょうか。自動運転と完全自動運転はまったく違いますから。それでもその間に世の中は大きく変化すると思っています。昔、日本中で走っていた路面電車が消えていったようにね。ではその時どうなっているかというとクルマを所有する人は新車を買い続けますが、クルマを移動の道具として見ている人は保有することの負担が大きいですから、公共交通機関化した完全自動化のタクシーを利用するようになり購入には到らなくなるのではと思っています。そうなると中古車に対しての影響は大きいですね。だから我々のようにクルマを売ることを生業としている人間はあまり甘く見ちゃいけないと思うんです。

自動車は「モノ」ではなく、
「サービス」として人と関わり続ける。

立花 中販連さんとしては、今後起こりうる変化に対してどんな取り組みを考えているのですか。

山下 正直答えはなかなか見えない中ですが、中古車販売店の持っている最大のインフラとは何かを考えると、それはピットでも展示場でもなくてやはり“顧客”を持っていることなんですね。まずはカスタマーの満足度を高めて顧客ロイヤリティを高めることが重要だと話しています。自動運転化が進めば、自動車保険や車検の収益はなくなっていきますが、そうなった時に顧客接点の強さで新しいサービスを展開できるかどうかが大切だと思うのです。

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中島 日本は確かにクルマの買い方が欧米とは違って、その場でこのクルマが欲しいと言って鍵をもらってクルマに乗って帰ることができませんよね。自動車販売店さんに行って注文すると、登記とか駐車場の手続きとか保険とかいろいろ手続きをしてもらって、納車の後は点検や車検でお店と繋がっている。これはモノを買うというよりもサービスを受けているという感覚に近いんです。しかもそのサービスが凄くハイレベルで行われている。だから単純にeコマースに置き換えることはできないんです。ですのでクルマの買い方に関して日本でドラスティックに変化がおこるとは思えないんですよね。

 そういう意味で言うと、所有ということでは人とクルマの関係は大きく変わらないかもしれないですが、ロボットタクシーのようなものが生み出すドラマは大きく変わっていきそうですね。

中島 実際に強いニーズがあります。先日山口県の過疎化が進んだ町にロボットタクシーを試験導入させてくれないかと話にいったんですが、行政の方が4つの町の町長さんを集めてくれたんです。するとどなたも「一日も早く来て欲しい」とおっしゃるんです。過疎の地域なので人口が減って小売店も次々と潰れ、そうすると買い物に行く場所も遠くなる。でも人口が少ないのでバスの本数はどんどん減っていく。タクシー会社も人がいるところでないと経営が成り立たないから過疎地域からは離れて行ってしまうんです。だからすぐにロボットタクシーを走らせてほしい、というのです。

立花 まさにロボットタクシーのコンセプトムービーの世界ですね。

山下 よくわかります。私の妻の実家も四国の山奥なのですが、妻の両親はもうクルマには乗れない。スーパーまではクルマで45分かかるのですが、そのために近所の若者にクルマを出してもらって足代を1万円出しているわけです。こういうことが日本中で起こっていますから、DeNAさんにはぜひ頑張ってもらいたいですね。

中島 ありがとうございます。頑張ります(笑)。

立花 僕も自動運転はそういった課題を解決する非常に有効な手段だと思います。ただ一方で、日本はそんなにお金がある状態ではないので、自動運転を広めていくためのインフラ整備という点では、まだまだ厳しいと思っています。そう考えると特に地方を中心に中古車に乗るという人はまだ増えていくのではないかと思いますし、それが今、僕らにできる仕事なんじゃないかなと思っています。室さんはどうですか。

 僕も自動運転は広まっていくと思いますし、同時にまだまだ中古車を広めていけるとも思っています。日本だけでなく、海外に目を向けるとインドやアフリカやタイなど、技術的に信頼性の高い日本のクルマが欲しくて仕方がないマーケットがありますから、これからは適正な場所に中古車を送ってあげるということも視野に入れて展開していきたいと思っています。

中島 話が少し変わりますが、私は若者のクルマ離れは止められると思っていまして。先ほどの“所有か利用か”という話。私は所有に利用がアドオンされるのではないかと思っています。つまり、クルマを使う人は増えていくということです。うちのAnycaという個人間カーシェアのチームは平均年齢20代で皆、クルマを所有していなかったんですが、Anycaを使って色々なオーナーさんの色々なクルマに乗っているうちに、「クルマ買いました!」という人がどんどん現れたんですよ。
つまりカーシェアでクルマに乗る機会が増えたことで、所有欲が刺激されたんですね。カーシェアが流行れば流行るほど若者のクルマ離れは止まると思います。

立花 うちのメンバーでもすでにAnycaでオーナーからクルマを借りて、デートに使っている人間や、逆に自分のポルシェをオーナーとして貸し出してちょっとした小遣い稼ぎをしている人間もいます。確かに若者とクルマの関係もだいぶ変わってきてますね。

既存のモデルを守ろうとする側からは、
イノベーションは生まれない。

トークはこの後、シェアリングエコノミーの可能性や、現在のカーセンサーのビジネスモデルの強みと課題、リクルートと自動車産業のこれまでの歴史など、さまざまな観点で展開された。そして、時代の大きな流れの中、RMPも変わっていかねばならないことをパネラーのみならず、会場の社員達の誰もが強く感じていた。しかし、どう変わっていくべきなのか。最後にお二人からRMPに向けて言葉が贈られた。

中島 カーセンサーがこれから2倍3倍の成長ではなく、110%成長とかを継続的に目指すのであれば、今のまま事業を進めていくのがいいと思います。でも、これから自動車を取り巻く環境が大きく変わるときに、このままじゃマズイという危機感があるのであれば、「自己否定できるかどうか」が鍵になると思います。
 他の事業者はカーセンサーのビジネスをどう切り崩すかという視点でルールチェンジをしようとしています。でもRMPはカーセンサーを守ろうとするから現在のビジネスモデルをなかなか壊せない。イノベーションのジレンマですね。
 でももし、RMPが既存のビジネスモデルを壊すことを恐れずに、逆にカーセンサーが最も嫌がることはなんだろうという視点で考えることが出来たら、すごいイノベーションが生まれるだろうと思います。そうなったらRMPが持っている顧客との接点から得られる“手触り感覚”がものすごく生きてくるはずで、誰も敵わなくなる。他の事業者にはそれがありませんから。だから「もしかしたらカーセンサーを壊しちゃうかもしれませんが、こんなモデル考えちゃいました」ということが皆さんの中から生まれることが1番だと思います。

山下 カーセンサーは中古車情報誌を通して新しいマーケットを創り上げてきました。マーケットがないところにマーケットを創り上げてきたんです。それが“リクルートのリクルートたる所以”だと思います。それをこの先もう一回やるしかない。既存のマーケットの深耕は行いながらも、新たなマーケットを創造する作業をしないといけない。私たちも変わっていく時はRMPさんと共に変わっていきますから共に新しい世界を切り拓いていきましょう。

立花 室さん、最後にいかがですか?

 本当に中島さん、山下さんおっしゃった通り、僕ら実は色々考えて、葛藤がたくさんあります。でも、心して取り組みたいなと本当に思いました。

立花 僕からも最後に。僕は、流通をリーズナブルにすれば中古車はまだまだニーズがあると思っています。もっともっと多くの方に中古車を届けるメディアにカーセンサーをしていって、その後は世界に届けたい、品質のいい中古車を。で、新興国に中販連さんとカーセンサーで作ったような安心な安全な中古車マーケットを先ず作る、そういう役割としてカーセンサーを伸ばしていきたいと思います。

確実に変わりはじめている時代の中で、RMPはどう変わっていくのか。それは、これまでの積み重ねの延長ではなく、こうあって欲しいという未来の姿から逆算することで初めて見えてくるものなのかもしれない。

パネルディスカッション観覧者感想

●新しい視点を多くもらえる時間でした。中古車だけでなく、社会全体の流れの中での自動車業界を捉える視点や社外の方々がリクルートに対して何を思い、何を期待しているのかという視点などをもらうことができ、視界が広がりました。

●「ないマーケットを作ってきたのがリクルートだった。」という山下さんの言葉と「『この事業は今のリクルートだとできない。』と社員が言っていることが一番の問題だ。」という中島さんの言葉が印象的でした。

●完全自動運転やカーシェアなどにより、クルマの所有(購入)が減るという思考になっていましたが、シェアでの利用がきっかけで購入に至る、趣味性の高いクルマには所有欲が働くという話には特に新しい気付きを頂け、印象に残っております。

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